2017/10/5

息抜きに読んでいる丸山真男セレクションの『肉体文学から肉体政治へ』という論考が面白かった。文学などの「フィクション」と社会制度が重ね合わされていて、鋭い視点だと思った。社会契約などの社会制度は人間の知性がなんらかの目的のために作り出したでフィクションであり、その成立以前にはひたすらに自然物として、明確に意識されない慣習としての社会があった。後期スコラ哲学において唯名論が台頭した後、それを継承した形で社会契約説が生まれたと丸山はいう。このような人間が作り出した、自然物でないという意味でのフィクションを信頼し承認する態度が近代という時代を作り上げるのである。しかしこのフィクションが慣習となり固定されるとそれはまた自然物して意識に上らないようになり、自己目的化してしまう。そうすると今度はナチズムなどが現れてくるのだと言われている。このフィクションはデネットに言わせれば"intelligent design"ということになるだろう。またフィクションという言い方は"user-illusion"とかいっているのと繋がる表現だと思う。デネットの思考を社会学方面に広げる可能性が感じられた。