2017/7/1

Fate/Grand Orderというソーシャルゲームを熱心にプレイしている。「アガルタの女」と言うストーリーが配信されて、個人的にはすごくいいと思ったのでいろいろ書いておきたい。まず最初に印象的だったのは、アガルタという空想上の場所に不夜城などの空想上の街、そして密告と拷問による完全監視社会といった空想的な社会理想が詰め込まれる入れ子状の構造である。こうしたメタ構造はシェヘラザードがすべての語り手であったという一層に加えて、このストーリー自体一つの物語であるという一層を追加することができる。こうした知性的な構造に対してシェヘラザードの動機がひたすらに「死にたくない」というプリミティブな感情であったという対比が美しい。またシェヘラザードは特殊な状況下で自身の生死をかけて物語った存在だが、物語自体は常に自身の生死をかけて自らを物語っている。物語というミームは受け手の興味を引けなければ忘れられ、それはミームの死を意味するからだ。私たちは物語にとってのシャフリヤール王なのだ。だから物語は悲劇であれ喜劇であれ私たちの魂に強く刻まれるように進化し続けている。この「アガルタの女」はそうしたある意味での悲劇を背負った物語たち、死後もなおサーヴァントとして語り直され続ける英霊という物語の、私たち読者に対する一つの反逆であると考えられるかもしれない。