2017/6/14

"Sex and Death"の今日読んだ第11章では生態学と進化論の関係が「ニッチ」という観点から考察されていた。結局のところニッチというものはある生物の生存や繁栄に関わる様々な次元からなる空間上に設定されるもので、生物から独立の抽象的なニッチが存在するわけではない。しかしその生物を系統発生学的に広い範囲で設定すれば、異なる生存圏において似たようなニッチを発見することが可能となる。これは第10章で論じられていた生物進化の歴史による制約と適応主義の関係と並行関係にある。抽象的なニッチを構想する考え方は第10章で言う所の"empirical adaptationism"であり、反対にそれを否定する見方は歴史的制約を重視する立場となる(だからこそルウォンティンは後者を擁護しているのだろう)。というのも歴史的制約が個体に関して大きく変化するならそれぞれに異なったニッチが考えられる=異なった淘汰圧が働くし、反対に大きな範囲でその制約が同じように働いているならそれらに関して似たようなニッチが考えられる=同じような淘汰圧が生じるからである。