2017/4/19

デネットの"From Bacteria to Bach and Back"を読み終わった。過去の著作の内容を"manifest image"、パターン認識によるデジタル化、人間によるインテリジェント・デザインといった新しい用語で再構成しながら、機械学習などの最近のトピックも論じるという内容であった。特に技術論に焦点が当たっていたように思う。タイトルの"and Back"の部分はインテリジェント・デザインから機械学習遺伝的アルゴリズムなどを用いた、我々が「理解」することなく用いる技術、すなわちポスト-インテリジェント・デザインへと回帰するということを指しているのだろう。

ところでこれは単なる思いつきだが"free floating rationals"は人間以外、例えば進化のプロセスそのものが認識する「理由」なのではないだろうか。

Evolution by natural selection can mindlessly uncover the reasons without reasoners, the free-floating rationales that explain why the parts of living things are arranged as they are, answering both questions: How come? and What for?

(Dennett, Daniel C. From Bacteria to Bach and Back: The Evolution of Minds (p.411). Penguin Books Ltd. Kindle 版. )

意識はミームによるユーザーインターフェースで、理由を認識する「私」はその上に現れるだけのものである。"free floating rationals"の存在を疑うこれまでの思考はまだ心身二元論的な、つまりデカルト的重力に引っ張られたものであったかもしれない。すなわち言語上の「理由空間」にしても確固とした「思考する我」が理由の認識者であるわけではない。