2017/3/25

大暮維人/舞城王太郎の『バイオーグ・トリニティ』11巻が出ていたので読んだ。ここまで10巻では絵のかっこよさで読ませる感じだったが、ここに来て一気に謎が解決されて大盛り上がりしてしまった。ファンサービスなのだろうか、舞城王太郎の昔の本のタイトルの引用があったりして面白い。人間の人生という物語が相互に取り込み合う世界観はデネットの「物語的重力の中心としての自己」論を思わせたりしてそのような方面の考察も楽しそうだ。完結したらやってみよう。

大今良時の『不滅のあなたへ』2巻も気づかないうちに出ていたようなので読んだ。主人公の「フシ」(2巻でやっと名前がついた)は周囲世界の情報をコピーしながら「不滅」である。コピー、不滅という語から連想されるのはやはり自己複製子だ。この作品はこのフシが様々なものに出会ってそれをコピーしながら放浪するという形で進む。このことはミームが複製されて伝達されていくことを象徴していると解釈している。そして儚く死んでいく人間の形をコピーしていくフシの振る舞いが世界に影響を与えていく様子は、人間が死んでもミームは残り世界を変えていくということを表しているのだろう。この作品は"modern synthesis"という新しい永遠から見た「火の鳥」になっていくのだと予想している。